アルディスは小さく頷いて上体を起こした。
オリビアの手を借りて馬車の中から降りてくるその姿に騎士達の視線が集まる。
木の根本付近に腰を下ろして息をついていると、茶色の髪の騎士が黒髪の騎士を引っ張りながら近くに寄ってきた。
「オリビアさん、また会いましたね!あ、覚えてますか?晩餐会の時のカルロっす」
オリビアは最初から気付いていた。
「もちろんです。あの時はお世話になりました。まさかこちらでも一緒になるとは思いませんでした」
カルロはものすごく嬉しそうな顔になる。
「覚えててくれたんすか!?ありがとうございます。俺、絶対お二人を守りますから!!」
彼の言う護衛の対象の中に自分も入ってる事にオリビアは苦笑しそうになる。
そんな彼女の様子に気付かない様子で、カルロは今度はアルディスの方に向いた。
「お嬢様、俺、カルロ・ル・クロースと言う者です。今回の任務であなたの護衛をおおせつかっていますので、よろしくお願いいたします」
カルロは目上の人物への態度と共に、人懐こい笑みを浮かべる。
傍らにいたイグナスは、そんなカルロの様子を見て呆れ返る。
令嬢を差し置いて使用人から挨拶するとは、そこらへんの愛想やルールをわきまえているカルロでは珍しい。
(浮かれすぎだな……)
こりゃ、この使用人の人も呆れてるだろうし、下手したらこの令嬢怒ってんじゃねぇか?
恐る恐る見守るが、何かしら返ってくるだろうと予想していた令嬢からの反応はなく、
「…………」
無表情にカルロを見返す彼女がそこにいた。
「えっ……」
これにはさすがのカルロも焦っている。


