それを聞いたハリスは大きく頷いた。
「わかった。信用しよう。さて、そしたらどうしようか……」
それなら、とオリビアは御者席に声をかける。
「ハリス、それなら休憩にした方がいいんじゃないかしら?お腹も空いてるでしょ?」
馬車の中から顔を出すと、ハリスを除く騎士たちが驚いた表情をした。
「ん?ああ、そうだね。馬たちも休ませないとスピードが落ちるし、雨宿りが出来そうなところで、雨が一段落するまで休憩をとるか」
「……了解しました」
騎士たちの返事と共に、一行の進む速さは段々下がっていった。
* * *
それから三十分ほど経った後──。
「うん、ここで良いか」
ハリスの言葉と共に、一行の休憩場所が決定された。
ここは森の中心部にある、一番大きな木の下である。周りの村は治安が悪く、発達もしていないので、麓に下りることは諦めたのだ。
少し離れた所には運良く川も流れていたので、馬車を引く二頭と三人の騎士それぞれの計五頭の馬はそこで水を飲めば良いだろう。
オリビアは、未だ馬車の席で眠りについているアルディスに声をかけた。
「アルディス、起きて。休憩するから、馬車から降りて」
そのまま少し待つと、やがて彼女の瞳がゆっくりと開く。
桜色の瞳は焦点が合わないらしく、いくらか不安定に視線をさまよわせたあと、オリビアを見つけて少し見開かれる。
「……オリビア……?ここ……?」
「ニンフィーの森の中よ。休憩をとるから。あ、昼食もとらないと。降りられる?」


