あなたが教えてくれた世界




「でも私はただの使用人よ。ハリスの方が他の騎士の方たちも不審に思わないんじゃないかしら」


「僕はいいよ。旅の決定権なんて柄じゃないし。確かに計画たてたりあの三人まとめるのは任されてるけど、自分で全部進めるより、君からの希望を聞いてそれに沿わせていく方が性にあってる」


「でも…………」


なおも食い下がろうとするオリビアを、いいからいいから、といさめるハリス。


「この話はこれで決定」


そう言い切られてしまうと、オリビアは反論できなくなる。


さすがにハリスは、オリビアの扱い方を心得ているといえる。


オリビアは短く息をついて、ハリスに訊ねた。


「今、どこらへんなの?」


ハリスは振り向かずに答える。


「ニンフィーの辺りの森だよ」


オリビアは少し驚いた。


「随分進んだのね……。ベリリーヴ侯爵の屋敷まで、あとどれくらい?」


「ここで半分くらいってところかな。順調にいけば、今日の日暮れには侯爵の屋敷につくよ」


ベリリーヴ侯爵の屋敷というのが、彼らの一番最初の目的地だった。その一家は歴史も古く、王家に長く仕えてきた一家だった。


近くに大きな街もなく、安い宿をとるよりも、屋敷に泊まる方が、城の暮らしに慣れているアルディスのためだというレオドルのはからいである。


「やっぱり、騎士軍の馬車は速いわね……」


オリビアは晩餐会や舞踏会に行くときにアルディスが使う馬車を思い出す。


豪華に飾り立てられた重そうな鞍をつけられ、同じく豪華で重量感のある馬車をひくので、スピードはかなりのろのろとしていた。


気付けば時間もかなり経っていたようで、太陽は頭上の高いところで輝いている。