『あー…と、大丈夫?』
「……お前が大丈夫?」
怪訝な顔で言葉を返してくる夕季は、いつもの夕季だ。
『……、何でもない』
言葉を口にしようとして、すんでで止めた。
それを見た夕季が何かに気づいたように私から目を逸らして鳥肉を1口……3口大に切っていた。
「……紅羅のこと」
話したくて、と呟いた夕季は横目に私を見た。
レタスを洗っているからか、または夕季になにを言われるか感じているのか……私はどんどん手が冷たくなっていく。
「……ありがとう。」
ストン、と言われた言葉はすぐに胸に入ってくる。
バッと夕季を見ると、夕季は顔を真っ赤にして包丁を乱雑に使用していた。
『……何て、』
「……幹部になる前からあいつとは仲良かったから…
幹部になる前の口調も性格も知ってた」
俺だけは、と付け足した夕季は寂しそうに笑った。
「別に、そんなの関係無いのに強がっていつもあんなひっくい声だして……
声変わりの時期に失敗してあんな女声になっただけなのに…
いっつもその事を恨めしく思っていっつも愚痴ってた。
……幹部になる前は無理して低くしようとはしてなかったのに…、紅羅は変わった」
性格まで、とボソリと呟いた夕季は悲しそうに顔を歪めた。
「……だからと言って、あいつに言えることもできなかった。
無駄に傷つければ嫌われるし。
……そんなの怖くて無理だった」
そっか。
夕季は、紅羅が大好きなんだね。
何だか微笑ましく思えて夕季を見ていた。
夕季は私の視線に気づいて「んだよ」と真っ赤な顔のまま眉を寄せた。
『……夕季、紅羅は自分であぁなったの。
私のおかげでもなんでもない。」
首を小さく振って言うと、夕季は目を見開いた後フッと笑った。
「……うん。」
『あ、もう喋らなくていいよ?
女嫌いは女嫌いらしく嫌ってて下さい』
「……あぁ?」
『よーし、ちゃっちゃとご飯作ろー』
明るくそう言って、切り終わったきゅうりを容器にレタスを入れてから飾り付ける。
トマトに包丁を入れて切っていく。
ストン、
紅羅は自分で強くなった。
そんな強さが、
ストン、
私にもあれば……
よかったのに。

