何か……
『暗いよ、空気が』
「……那琉?」
『何コレー、暗いのは嫌いなんだよ』
私が頬を膨れさせると困惑した様な皆の顔が見えた。
それに肩を竦めて口を開いた。
『…別に、守ってもらおうと思ってない』
「………」
玲の拳に力が入ったのが視界に入って、それに手を伸ばす。
『私、皆と嫌々居ることにしたの。
自由が無くなるなんて、嘘だと思ってたから。』
玲の手は私の手が触れたことで少し力を失って解くことができた。
『……逃げようと、思ってたよ。
どんな手段を使ってでも、玲達…蒼月から。
でもね、そんなことができなくなっちゃった』
そう言ってぐるりと皆を見渡すと、ジッと私を見てくれていた。
それに微笑みながら口を開いた。
『……皆が、大好きになっちゃったから。
離れられなく、なったから。
……皆との時間が、自分の自由な時間より楽しいと思ったから』
そうだった。
前は逃げ出そうとずっと思ってた。
だけど、気がつけば皆の優しさが身に染みるように伝わって、あったかくて。
自由の時間を、この時間に費やしても罰はくだらないんじゃないか、って。
思ったんだ。
「……上等」
鳩の豆鉄砲をくらったような顔をしてた皆は笑って表情を崩した。
『……皆は、いつまでも笑ってて』
そう、いつまでもーーーー
ちょっとした誘拐事件は丸く、小さく収まった。