「なるほどねぇ、それで、今の状況に至るというわけか」
「うん、そんな感じです」
一通り話し終えたら、なっちゃんに聞かれた。
「でもさ、だからって好きになっちゃいけないわけじゃないでしょ?」
それもそうだ。別に好きになっちゃいけないと誰かに言われたわけでもない。でも……
「あたしね、あの時のこと、後悔してるんだ。たとえ相手が三人でも、先輩でも、自分の思ってることははっきり言うべきだった。
伸治くんのこと避けるようになってから気づいたんだ。人を避けるのがどれほどつらい事か。
でもね、それを承諾したのは、他の誰でもないあたしだった。
だから、あたしはそれを貫き通そうと思ってたんだけど、伸治くんに『傷つく』って直接言われた時に、伸治くんは何も悪くないんだから、伸治くんが苦しむのはおかしいなって思ったの。
だから、避けるのはやめにしたけど、名前だけは、けじめとして、そのままの呼び方で呼んでるんだ。」
「古川先輩にほんとの事を言わなかったのは何で?」
「伸治くんはね、すごくいい人だから、きっと、それを知ったら、自分を責めると思うの。でも、いくら伸治くん目当てで来てたからって、きっぱり『いやです』って言えなかった私が悪い。伸治くんに責任を感じて欲しくなかったから、言わなかったし、これからも言うつもりはない」

