そう言って背中を向ける伸治くんを見て、私はなぜか離れたくないと思ってしまった。
このままわかれたら、もうずっと会えないんじゃないか―…
会話をすることはないんじゃないか―…
そう感じた私は、とっさに声を掛けた。
「―…伸治くん!!」
その言葉に反応した彼は、立ち止まってゆっくり振り返った。
けれど、その続きが出てこない。
何を言えばいいのか分からない私は黙ってしまった。
すると、伸治くんが口を開いた。
「村田と上手くいってんの?」
私は、なんて返せばいいのかわからなかった。
上手くいってないわけじゃないけど、啓太には申し訳ないことばかりだ。
それでも、伸治くんを不安にさせちゃいけないと思った私は、
「うん!明日もデートなの!」
と返した。
ほんとは初めてのデートだけど、嘘じゃないし。
「そっか」
それを聞いた伸治くんは、安心したような、寂しそうな、そんな表情をしていた。
そして、何かを決意したように顔を上げ、小さく手を振りながら、
「バイバイ」
と言った。
もし、私が返してしまったら、本当に会えなくなる気がして。
お別れの言葉を言いたくなくて。
「またね!伸治くん!」

