「いっちゃったね。翼くん」


俺が空港のフェンスの向こうに翼が乗った飛行機が消えていった空を見上げていると葵がやってきた。


「……葵があのときよく見ろって言ったのは、翼のことだったんだな」

「翼くんは誰よりも何よりも哲ちゃんを大切にしていたよ」


葵も何かを思い出すように空を見上げた。


「……葵、俺はヒーローなんかじゃない。ずっとお前が俺のヒーローだったんだ」



引きずっているあの頃に手を振るときがきた。