小さなゆびわ

メッセッジカードには、「結梨さんへ、拓也より」の一言。
高田くんか。また…。
はーぁ………。
というため息の裏には、もしかしたら。
まだ付き合うチャンスがあるっていう事?
っていう気持ちがあったかも、しれない…。
ちょっと、好きになれない…。
や……や、だ。
あたしったら…っ。
気をぬくと、高田くんの事考えてる……っ。
ドキドキドキドキ………。
心臓、うるさい…。
あーもうっ!こんな気になるなんて……。
「え、なぁにそれ?」
えっ、見てた!?
「い、いや。あ、あのぉ…」
オロオロしちゃう…。
「ほぇ、高田くん!?スゴーイ!!」
もう、やだ、この感じ……。
「うぅ。さ、先行くからねっ!」
「フフフ……。じゃあねっ!」
うううううぅ………。
いやだぁ。
あたし、注目されるのが恐いの…。
習い事で貰った賞状も引き出しの中。
家には、絶対に貼らない。

あ、高田くん。
「おはよー、ゆびわ、見たよ」
なるべく、そっけなく言った。
「そ、そう…」
ちょっと嬉しそうな顔。
ホントのホントに、どうしよう……。


帰り道。
一人で帰ってた。
真実ちゃんは家が近いらしいけど、女子バスケ部らしいし。
家に帰ったら急いで塾の準備をして玄関を出た。
送ってくれる人もいないからね……。

あたしのクラスは上から2番目。
席に適当に座って自習をしてると。
「はい、算数の前に、新入生の高田くん」
えぇ……っ!?
う、うそ…っ?
「空いてる席に座って」
マ、ジ…っ?
高田くんがまっすぐにあたしの横に座った。
「なんで?他にも空いてるでしょ!」
小声で言うと!
「え、ダメ?好きな人に教えてもらいたかった…」
ボンッ!!!!
あたしは自分の顔がゆでダコの色になるのを感じた。
「そんなこと言うのヤメて」
ピシャリと言ってみたけど………、胸はドキドキしている。
あぁ……。もう、ヤダァ……。
あたしの心臓、もたないよ…っ。