ズルい。 そんなの、ズルいよ。 ふいにそんな顔を見せるなんて。 口角を少しあげて微笑む大上くん。 初めて見たその表情に胸をぎゅっと掴まれたような感覚に陥った。 ドキドキと鳴り止まない胸を必死に落ち着かせようとした。 掴まれた腕。 服の上から感じる温かなぬくもり。 前を歩く背中。 胸の鼓動はどんどん早くなる一方。 この人の近くにいるかぎり平常心でなんていられないな。 みんなの声が遠くに聞こえる。 わたし達は上履きのまま校舎の外へと出た。