やっと動いてくれた足。


廊下に上履きの乾いた音が響く。


早く。


早くここから離れなきゃ。



下駄箱目指して無我夢中で走る。



最悪だ。
忘れ物なんて取りにくるんじゃなかった。


なんでわたし……携帯電話を机の中に忘れてきたんだろう。



自分のばか。




「―――ねえ、ケータイ取りに来たんじゃないの?」




グイッと腕を掴まれ足が止まる。


上から降ってきたその声に全身の血がサーッと引いていくのが分かった。



一番見たくない顔が今、目の前にある。