「違う……つきあってないよ」



水瀬くんの顔が見れなくて俯いたままそう答えた。


文化祭の日のことがまた思い出される。



水瀬くんの前でキスしたんだ。
彼女だ、って大上くんが言ったんだっけ。



本棚と水瀬くんの横を通り過ぎ足早に図書室を出た。


床だけを見つめて早歩き。



大上くんが、水瀬くんがどんな顔をしていたかは知らない。



***



「──水瀬の好きな奴って、日向子だろ」




日向子が出て行って二人になった図書室。


ずっと黙っていた大上が突然口を開いたので水瀬は少し目を見開いて彼を見た。


だが、すぐにいつもの穏やかな表情に戻る。




「……及川さんのこと大上は別に本気じゃないんでしょ?なら手を引いてくんないかな」


「本気で好きだけど?」