塔矢はうんざりしたように顔をしかめる。


「俺はあの中じゃ一番下っ端の若造なんだ。俺の裏工作ごときがあの狸おやじ共に通用するわけないだろう。何より大臣たちは俺以上に紗也様を溺愛している。紗也様には紗也様の望む相手と結婚してもらいたいと常々思ってたらしい」


 話を聞いて和成は悟った。
 紗也はちっとも不憫ではなかった。
 こんなにも皆に愛され守られていたのだ。


「紗也様が選んだから、私が認められたわけですか」


 呆然と見つめる和成を見据えて塔矢は告げた。


「だが、完全に認められたわけじゃないぞ。今のところはおまえ自身ではなく、紗也様の目が承認されたにすぎない。大臣たちはおまえを見極めようとしている。君主の命に背く事はないが、紗也様と同じように何もかも無条件で手助けしてもらえると思ったら大間違いだ。紗也様がおまえを選んだ事を間違いではなかったと証明して見せろ」


 そして塔矢はいたずらっぽく笑って付け加える。


「それに、好きだろ? こういうこと」