「いいかげんヒマをもてあまし始めただろう」


 突然声を掛けられて見上げると、塔矢が横に立っていた。
 和成は立ち上がろうとして腰を浮かせる。
 するとその前に塔矢が隣に腰を下ろした。


「少しは気持ちが落ち着いたか?」


 塔矢の問いかけに、和成は自嘲気味に笑う。


「元々落ち着いています。私は薄情なんです。あんなに愛していたのに、今もその想いは変わらないのに、紗也様のために一度も涙を流していないんです」

「俺も涙は流していないぞ。だからといって紗也様の死を悼んでいないわけじゃない」


 和成が黙り込むと、塔矢は話題を変えた。


「戦が終わったら俺に話があるんじゃなかったか?」


 和成は言い淀む。


「今となっては、もうどうでもいい事です」
「いいから話してみろ」