「わかったから、顔を上げて」


 和成は顔を上げて紗也を見据える。
 無邪気な笑みを浮かべて、幼い君主は和成を見つめ返した。

 わかったと言いながら、この方は本質を何もわかっていない。
 それを悟ると和成の不安は益々募る。

 だが今は戦に集中しなければ。
 塔矢が言ったように戦に勝つ事が紗也を守る事になるのだ。

 兵士のひとりがおずおずと和成に声をかけてきた。


「あの、和成殿。秋月隊、塔矢隊、敵と接触した模様です」


 和成は不安を頭の隅に追いやって返事をする。


「了解しました」


 そして静かな笑みを湛えて紗也に言う。


「紗也様、画面の戦況図をご覧ください。わからない事はなんなりとご質問下されば、私がお答えいたします」

「う、うん……」


 いつになく穏やかな和成に面くらいつつも、紗也は言われた通り画面に視線を移した。