城に帰った翌日から塔矢は、毎朝毎晩和成の部屋を訪れた。
 そして、飯を食え、風呂に入れ、と生活の命令を下す。

 話しかければ普通に受け答えするし、仕事を頼めばきちんとこなす。
 言われれば言われた通りに動くが、放っておくとぼーっと座ったまま何もしないからだ。

 五日が過ぎて和成が命令されなくても食事を摂るようになった頃、塔矢に案内されて右近が部屋を訪れた。

 和成の部屋は安全管理区域にあるので、通常は認証札を持った者しか入れない。
 そのため右近が城内にある和成の部屋へやって来るのは初めてだ。

 部屋に入ってきた右近は、珍しそうにキョロキョロ見回した。


「へぇ、案外広いんだ。しかも薄気味悪いほど片付いてるし。男の部屋じゃねーぞ。おまえらしいって言えば、らしいけどな」

「うるせーよ。時々塔矢殿が来たりするんだ。片付けてないとまずいだろ。先週は散らかってたけどな。何もする気がなくて」


 和成はそう言いながら、机に向かって座った右近に茶を入れて差し出す。
 そして自分もその前に座り、茶をすすり始めた。

 その姿を見ながら、右近は事前に塔矢から聞かされていた和成の様子を納得する。
 表面上は何もおかしいところはないが、心をどこかに置き忘れてきたような感じなのだ。