紗也が言葉尻を捉えて含みのある言い方をする。
 和成はすかさず釘を刺した。


「退屈だという理由で徘徊なさるのはダメですよ」
「そんな事しないわよ」


 紗也は口をとがらせて否定するが、じっとしているのが苦手な彼女の事だから当てにはならない気がする。

 ふと思い出したように紗也が尋ねてきた。


「ねぇ。戦の最中に和成の指示で砦を出るとしたら、どういう時?」

「それは砦の中まで敵に攻め込まれた時です。現時点でその心配はありませんが、絶対にないとは言い切れません。だから私の目が届く場所にいらして頂かなければ困るんです」

「そっかぁ。そういう事ね」


 紗也は他人事のように軽く頷いている。
 その様子を見て、途端に和成の胸中は不安で一杯になった。