「俺が今までのままでいたいって言ったら、泣かせる事になるんだろうな」


 和成が紗也の想いを受け入れなかった場合、嫌な思いをするのは紗也ひとり。

 他の誰を差し置いても、紗也にだけは嫌な思いをさせたくない。

 どちらにせよ、紗也の想いを知ってしまったからには今までと全く同じというわけにはいかないだろう。

 和成はひざをかかえて項垂れた。


「俺に誰にも文句を言わせないだけの器量があればなぁ……」


 結局、堂々巡りに陥る。
 どうすれば八方丸く収まるのか。
 そもそも八方丸く収める事に無理があるのか。
 せめて自分に対する評価がわかれば……。

 和成は未だ結論を出せずにいる事に焦りを感じ始めた。