だが、そのためには紗也が塔矢に自分の気持ちを話したのか確かめる必要がある。

 塔矢がいる執務室に出向いて聞くのも本末転倒だし、居室を訪ねるには紗也の許可がいる。
 そしてそれは女官たちに伝えられるのだ。

 和成の方から訪ねて行ったとなると、噂好きの女官たちから妙な勘ぐりを入れられるのは想像に難くない。
 かといって許可の必要な居室に、いつものごとく怒鳴り込むわけにもいかない。

 電信で尋ねるのも無理だ。
 軍用無線電話の通話や電信の履歴は、制御用電算機に一定期間蓄えられている。

 誰に見られても差し支えのないものしか送れない。
 黙認されてはいるが基本的に私用での利用は禁止なのだ。

 どうにか紗也と二人きりで話せる方法はないものか、和成は考えあぐねていた。

 城内に入り、自室へと続く廊下を進む途中で、和成はギクリとして足を止めた。

 自室前の中庭へと降りる石段に人影が座っている。
 人影は和成に気付くと廊下へ上がり、小さな身体をめいっぱい伸ばして仁王立ちとなった。