腕を組んで高らかに宣言する右近に、和成は軽く手を振りながら冷めた調子で言う。


「あぁ、是非そうしてくれ。俺もその方がありがたい」


 その後二人は他愛のない世間話をしながら飲食し、九時に店主に挨拶をして店を出た。

 店を出た和成は、立ち止まって周りを見回す。
 それを見て右近が問いかけた。


「何か、いそう?」
「いや。大丈夫だと思うけど、一応家まで一緒に行こうか?」


 和成の申し出に、右近は手を振って苦笑する。


「いいよ。そこまで警戒しなくても。無事に帰り着いたら連絡するし」
「わかった。くれぐれも家に帰って”ただいま”って言うまで気を抜くなよ」


 真顔で言う和成に、右近はガックリ肩を落としてつぶやく。


「学校の遠足かよ……」


 右近は軽く手を挙げて別れを告げると、大通りの雑踏の中へ消えていった。

 姿が見えなくなるまで見送った後、和成は大通りに背を向ける。
 そして城に向かって歩き始めた。