連絡先なんか知らないはずなのに、呼んでくれと言われたらどうするつもりだったのか。
 店主のたくましさと機転に和成は言葉を失った。
 少しして気を取り直すと、無線電話の番号を書いた紙を店主に渡す。


「もしも、俺の事で困った事になったらそこに連絡して下さい」

「いやぁ。貼り紙のおかげで来た客は怪しい奴より女性客の方が圧倒的に多いですからね。気にしないで下さい。私が勝手にやってる事ですし。和成さんも今度彼女と一緒に来て下さいよ」


 そう言って店主は和成の肩を叩いた。


「え?」


 和成が不思議そうに店主を見ると、店主はからかうようにひじでつつく。


「またまたぁ。雪祭りの夜にかわいいお嬢さんと手をつないで歩いてたじゃないですか」

「あ……」