通りの向こうから右近が手を振っていた。


「よーぉ。すっかり生き返ったみたいだな」
「だから、死んでねーし」


 右近は声を上げて笑った後、和成のとなりに紗也がいるのに気付いて一礼する。


「仕事中みたいだし、また改めて電話でもする」


 そう言って軽く手を上げ、その場を去った。

 遠ざかる右近を見送っていると、右近は斜め後ろを振り向く。
 そして和成が見た事もないような優しい目をして微笑んだ。
 彼の視線の先には、長い黒髪の女性がいる。
 彼女の髪飾りに和成は見覚えがあった。

 チラリと見えた横顔をもっとよく確認するため、和成は一歩踏み出す。
 その時、通りの灯りが一斉に消えた。

 灯りが消えると、月のない冴え渡る冬の夜空に満天の星が瞬き始める。