再び身体を起こそうとする和成を、塔矢は寝台に押しつける。


「いいから動くな。そんな身体で護衛の役に立つか。俺が代わるから黙って寝てろ」
「すみません。ご迷惑をおかけします」


 和成はふと気になって、周りの異様な光景について聞いてみた。


「ここは城内の医局ですよね。どうして私は個室なんですか? それに、この花は?」


 塔矢は寝台の横に椅子を持って来て座り説明する。

 和成は国境で気を失った後、とりあえず砦に運び込まれた。
 砦で応急処置を受けた後、城の医局で輸血と手術を受け、なんとか一命を取り留める。
 その後は病室に移され、傷の回復と経過を見守る事となった。

 はじめは三人部屋にいたのだ。
 ところが少しして眠れる美少年がいると噂になった。
 そしてその内、目覚めて最初に目にした女性と恋に落ちるのだとか、お伽噺のような尾ヒレも付いて、女性看護師たちがヒマさえあれば和成の顔を見に来るようになってしまった。