月下の誓約



「ちょっと話聞かせてもらいたいんだけど。返答次第じゃ、たたっ斬るよ」


 和成は笑ってそう言うと、男の目の前に刀を差し出し、親指の先で鯉口を切って見せた。

 もちろん民間人を斬るつもりなど毛頭ない。
 ――が、脅しとしては充分効いたみたいで、男は泣きそうな顔で叫んだ。


「わかった! 何でも話すから!」


 騒ぎを聞きつけた店主が店の奥から声をかける。


「和成さーん。店の中で刃傷沙汰(にんじょうざた)は勘弁してくださいよ」
「お騒がせしてすみません。ちょっと外で話してきます。すぐ戻りますので」


 そう断って、和成は右近と共に男を連れて店の外へと出て行った。

 外に出ると店の壁際に置かれた長椅子の真ん中に男を座らせる。
 逃げられないように男を挟んでその両脇に右近と和成が座り、男と腕を組んだ。
 男は緊張した面持ちで和成を見つめている。

 右近が面白そうに笑いながら、男の顔を覗き込んだ。


「こいつの御用達の店に現れるなんて、あんたいい度胸してんなぁ」


 男は気まずそうに少し右近を見た後、すぐに和成に視線を戻した。