月下の誓約



「それのどこがふられてるんだよ」
「あの方は塔矢殿も好きなんだ」
「え? 恋多き女?」


 右近が眉をひそめる。


「そうじゃない。俺を好きな気持ちと塔矢殿を好きな気持ちの違いがわからないらしい。だから、俺を好きな気持ちは恋じゃないと思うって言われたんだ」

「なんか微妙だなぁ、それ。んで、それ以来素っ気ないとか?」

「素っ気ないならいいんだけど……」


 和成が口ごもると、右近が何かを察して目を輝かせた。


「お? 何かあったな?」
「何もねーよ。ってか、あったらまずいだろ」


 素っ気ないどころか、変わらず紗也は無邪気で無防備だと言いたかったのだが、右近には何かを感付かれてしまったらしい。
 紗也を抱きしめた夜を思い出して、和成は思わずうろたえた。

 何か言わない事には右近が引き下がってくれそうにないので、毎晩のように紗也が和成の部屋の前にやって来るのを塔矢に注意してもらった事を話した。