「そろそろ時間です。お部屋にお戻り下さい」


 そう言って和成は、紗也の手を取って一緒に立ち上がった。


「今夜の事は二人だけの秘密だからね」


 楽しそうに笑いながら、紗也は渡り廊下の向こうに消えて行った。

 紗也のいなくなった上着の中が少し肌寒く感じられる。

 二人で小さな秘密を共有した夜。
 今宵の事はきっと一生忘れられないだろう。

 和成は廊下に立ち尽くしたまま、しばらくの間紗也の立ち去った渡り廊下の門を眺めていた。




(完)