そして表情を和らげ、思い出したように尋ねた。


「さっき言ってた、人間になる方法ってのは何だ?」

「あぁ、お伽噺ですよ。魔法使いに命を与えられた人形が人間になる話です。右近が言うには私が中途半端なのは、その人形と同じだからだそうです」


 塔矢が呆れたようにため息をつく。


「おまえ、わからないからって何でも右近に聞くなよ。少しは自分で考えろ」


 和成は気にした風でもなく、笑って答えた。


「右近にもこれは自分で考えなきゃ意味がないって言われました。私が人形と同じなのは人の心がわかってないからだというのはわかりました。お伽噺の人形が人間になるためには正直で勇敢で優しい子にならなきゃいけないんですけど、私にはその意味がわからなかったんです。その心を手に入れれば人間になれると言われても、私は嘘つきでも臆病でも冷酷でもないし」


 塔矢はニヤリと笑い、小刻みに何度も頷く。


「なるほどな。それがわかったのか」
「はい。全部、他人のための心ですよね」
「わかっただけじゃ、人間にはなれないぞ」
「はい。手に入れられるよう頑張ります」


 和成は笑顔で拳を握って見せた。