護衛の解任は紗也に命じられる以外に方法はない。
 理由も明かさず解任を求めたとしても紗也は応じないだろう。
 ならば、理由を明らかにして解任を求める。
 それに元々理由はバレているのだ。

 塔矢はそれを聞いたとき、もしも紗也が和成の想いに応える気になりでもしたら、益々面倒なことになりかねないと反対をした。
 しかし、ごまかしたところで紗也が納得しないことはわかっている。
 毎日のように追求されるとしたら、それはそれで面倒には違いない。

 あくまで、紗也の意志を尊重するというので渋々承諾したのだ。

 和成の望みは想いを伝える事ではなく、解任を求める事だった。
 決めるのは紗也だ。

 しかし、解任が望めなかったとしても、それはそれでかまわない気になっていた。

 この策を思いついた途端、和成の心は嘘のように軽くなったのだ。
 それと同時にあの身震いがする真っ黒な感情も、どこへともなく雲散霧消していた。

 紗也は黙って和成の話を聞き終わると、少し微笑んで和成を見つめ返した。


「最近、和成の様子がおかしかった理由がやっとわかった。ちゃんと話してくれてうれしい。私もちゃんと答えるね。私の決断は――――」