三人が執務室を出ると、塔矢は部屋に鍵を掛け、それを和成に渡した。


「紗也様、楽しんでらして下さい」


 紗也に笑顔を送り、塔矢は財務局へ足を向ける。


「行ってきまーす」


 紗也は立ち去る塔矢に手を振ると、和成のそばに駆け寄った。

 二人は城の出口へ向かう。
 並んで歩きながら、和成はどこを案内するか考えていた。
 自他共に認める”ひきこもり”の和成は、自分自身が城下町をあまり把握していない。
 和成がよく行く本屋に連れて行っても、紗也が満足するかどうかは微妙だ。

 紗也に希望を聞いたところで、箱入り城主の彼女も似たようなものだろう。

 先日、佐矢子に付き合って城下の商店街をうろついたのが、こんなところで役立つとは思わなかった。