皆が忘れているが、一応働いているので紗也にも毎月給料が支払われている。
 ただ、使うことがないので城の金庫にずっと蓄え続けられているのだ。

 塔矢が書類を持って立ち上がった。


「二時間程度で帰って来いよ。あと、あまり物騒な所にはお連れするな」

「心得ております。塔矢殿は経理に戻られるんですか?」

「あぁ、会議がある。普通の電話には出ないから、緊急の場合は専用回線使え。俺への土産はそっちで適当に決めてくれ」


 真顔でサラリと面妖な事を言う塔矢に、和成は肩を落として、ため息をつく。


「なんで毎日城下から通ってくる人に城下の土産を買わなきゃならないんですか」

「紗也様が買ってくるとおっしゃったんだ」

「わかりました。だったら紗也様に”お父上”にふさわしい物を選んでいただきますよ」