何がどうなっているのかわからず、呆然としている和成の腕を乱暴に掴んで塔矢は自分の前に押し出した。


「おまえのやらかした事だ! よく見ろ!」


 突きつけられた現実に、ぼやけていた和成の意識が一気に覚醒する。
 目の前に広がる平原には、おびただしい数の敵兵が息絶えていた。
 ざっと一個小隊はあろうか。

 目を見開いたままゆっくりと視線を落とした和成の手には、血にまみれてガタガタに刃こぼれした刀が握られている。

 手も着物も刀と同じように血にまみれて赤黒く染まっていた。
 生臭い血の匂いに吐き気を催して、和成は口を押さえながらその場に膝をつく。

 全身が震えて、涙があふれ出した。


「う……あ……うあぁぁ――っ!」


 大声を上げて泣きわめく和成を、塔矢と先輩隊員たちは黙って見つめる。
 少しして幾分落ち着いた頃、和成は塔矢から件の心得を聞かされたのだ。