月下の誓約



「わかりました。努力します」
「えらそうに言ったけど、今の全部、俺が初陣の時、塔矢殿に言われた事なんだ」


 そう言って和成は慎平の肩を叩いた。


「和成殿は初陣が前線だったんですよね。やっぱり怖かったですか?」
「あぁ、まあ、最初はね」


 和成は曖昧な返事をする。

 実は初陣の事をほとんど覚えていないのだ。

 初めて人を斬った後、目に飛び込んだ返り血が視界を赤く染め、命を落として倒れかかってきた敵兵の顔が目の前に迫っていた。
 和成の記憶はそこで途絶えている。

 次に覚えているのは、頬に激しい衝撃を受け、背中から木の幹に叩きつけられてうめいた事。

 直後、塔矢に胸ぐらを掴まれ怒鳴られたので、彼に殴られたのだと察した。

 周りはやけに静かだった。
 敵兵の姿がない。