「相手が誰だろうと、どんな事情があろうと断るつもりだから読む必要ないし。読んだ挙げ句に断る方が失礼だろ?」


 和成がそう言うと、慎平は残念そうに軽く嘆息した。


「そうですか。和成殿とお似合いだと思ったんですけど」
「何? 慎平の知り合い?」


 意外そうに尋ねる和成に、慎平が笑顔になった。


「興味わきましたか?」
「いや、これ以上聞かない事にする」


 再び落胆した慎平は、和成に問いかけた。


「誰か、心に決めた方がいるんですか?」


 核心を突かれてドキリとした和成の脳裏に、紗也の姿が浮かぶ。
 それを慌てて打ち消し、和成は曖昧な笑みを浮かべた。


「いないよ。今は恋愛する気がないだけ」
「そうですか」
「面倒な事、押しつけてごめんな」


 慎平を後に残して、和成は改めて自室へ向かった。