紗也はすぐさま顔を上げて、パッと笑顔をほころばせた。


「うん。教えて」

「かしこまりました。では、日中は公務に追われておりますので、明日から業後に一時間程度でよろしいですか?」

「うん。それでいい」


 すっかり機嫌が直った事に安堵して、和成は紗也に一礼し出口へ向かう。
 戸口で振り返り塔矢に告げた。


「塔矢殿、私はこの後はずっと電算室を手伝いますが、いいですか?」

「おぅ。会計情報が使えないんじゃ、経理は仕事にならないからな。俺はこれがあるから電算機は必要ない」


 そう言って塔矢はそろばんを振ってみせた。