少しの間俯いてなにやら考え込んでいた紗也が、おもむろに顔を上げた。
 目を細くして探るように塔矢を見据える。


「ねぇ、塔矢。私、わかっちゃったんだけど」


 塔矢は穏やかな笑みを浮かべて静かに尋ねた。


「何のことでしょう」
「元々和成を極刑に処するつもりはなかったんじゃないの?」


 表情を変える事なく、塔矢は静かに問い返す。


「なぜ、そう思われますか?」
「だって、戦には勝ったし、私は無事だし、結果的に何も悪いことは起きてないのに和成の様な優秀な人材を死なせるのはもったいないじゃない。だけど本当なら極刑に値する罪だから公然と恩赦を与えるわけにいかないし。だから大義名分の為に署名を集めたりしたんじゃないの?」


 塔矢は相変わらずの笑顔を浮かべたまま拍手をした。