苦笑する塔矢を一瞥して、紗也は少し頬を膨らませる。


「鬼のように怒って和成を殴った塔矢も怖かった」

「それは失礼いたしました」


 塔矢は声を出して笑った後、更に指摘した。


「でもやっぱり和成がらみなんですね」

「だって考えてみれば、こんなに長い間和成と一緒にいたのって初めてなんだもの。何もかも和成がらみになっちゃうわよ。城内だと、和成はいつも忙しそうにあちこち飛び回っててほとんど私のそばにいないし。まぁ、城内じゃ護衛の必要ないしね。今、何してんの?」

「自室で謹慎です」

「ふーん」


 ふと紗也の脳裏に、戦場で見た血まみれの和成が浮かぶ。
 そして、あの時気まずくて聞きそびれたことを塔矢に尋ねた。