一気にまくし立てて塔矢はさっさと和成の部屋を出ていった。

 塔矢を見送った後、部屋の戸を閉めた和成は、先ほどと同じ椅子に座り机の上に上半身を投げ出した。
 そのまま片腕を枕にして横を向く。
 そして目の前にある署名の束を意味もなくパラパラとめくってみた。

 しばらくして身体を起こすと、机に立てかけてあった刀を手に取った。
 鍔を目の高さまで持ち上げ親指で鯉口を切る。
 のぞいた刃を少しだけながめて、再び指先で元に戻す。

 これを意味もなく何度も繰り返した後、机の上に刀を置いて頭をくしゃくしゃとかきむしった。


「あーっもう! ゆっくりなんてできねー! 謎々の答えはわかんねーし!」


 そして、再び机の上に上半身を投げ出し、組んだ腕の上に顎をのせた。
 切なげに眉根を寄せてポツリとつぶやく。


「なんで、紗也様なんだよ」


 しばらく机の上に突っ伏していると腹が鳴った。
 顔を上げて時計を見ると昼休みが終わろうという時間だ。

 昼食まで抜いたら、今度こそ塔矢のげんこつを食らうかもしれない。

 和成はのろのろと立ち上がり、部屋を出て食堂へと向かった。