不思議に思いながら門に近づくと、女子の会話が耳に入った。 「やばい!あそこの高級車の前に立ってる人ちょーかっこいい!」 「なんか執事服みたいなの着てるよ!?車止めてあるけど、だれか待ってるのかな!?」 「あのメガネがいい!メガネ外した顔も見てみたいな〜」 高級車、執事服、メガネ。 そのみっつの単語を耳にしたとたん、人だかりの向こうにだれがいるのか察しがついてしまった。 「――……柚子様」 逃げてしまおうか、と考えついたときに聞こえてきた穏やかな声。 この声は、やっぱり……。