「明日は、姫さんに近付けねぇから俺はオリビアの動向を見張ってる」


「───あぁ」


それから警備の話をしてヴァイスは部屋を出て行った。

今、部屋にいるのは俺とフローラだけ。

と言っても、未だ目を覚まさないフローラはベッドで安らかな寝息を立てているのだが。

少しの間、ベッドの端に腰を掛けてフローラの寝顔に癒されていたが、肝心な事を思い出す。

フローラの前髪をそっと指先で除けて現れた額に人差し指と中指の先を当てる。


『我が手に宿りし力を解き放ち この者を守る光の盾となれ』


詠唱を唱え終えると、額に浮かんだ魔法陣がフローラの中に吸い込まれて消えていく。

消えない不安を少しでも払拭出来るように、彼女自身にも魔法の守りをかける。

触れていた指先を離して、そこに口付けた。


折りしも明日は満月で、魔法の力が最大限になる。

星祭りが無事に終わればいいが───