夜の散歩道、学校のプールを差しかかった辺り。

何か大きなものが落ちる豪快な音。

不法侵入と分かりつつも、必死にフェンスをよじ登った。

そこで見たのはプカプカと漂う人。まさか自殺をしようとした?

気付いたら助けようと夢中になって、飛び込んだ。

「バーカ」

その人の傍まで辿り着いた時に聞こえた低音の声。

もう漂う事はなく、僕と同じように立っていた。

電灯は切れかかっているのか、チカチカと瞬きをする。

だから顔まで判別出来ない。分かるのは、性別だけ。

文句を言おうとしたけれど、別の水音によってそれは消えた。

飛び込むような音ではないから、きっと上がろうとしているのだろう。

引き止めようとしたけれど、引き止めても何を話せば良いか分からない。

文句を言おうとしても、直後よりも怒りはない。

だからそのまま僕もプールから上がった。