「…わかりました。すぐには無理ですよね? いつ引き取りに行けばいいですか?」


犬を飼うことに慣れているような彼に、そう聞いてみる。


「―――そうだな、夏休みが終わる頃かな。その頃には、走り回れるようになってる」


どこか遠くを見つめながら、少し考える素振りを見せると、そんな返事が返ってきた。

じゃ、預かるわ、と彼は私の手から段ボールを受け取り、踵を反す。


私も帰ろう、そう思って歩を進めようとしていると、

さっきの彼は振り返ってこう告げた。


「俺、2―3の和泉 夏波(いずみ なつは)、何かあったら呼び出して。あんた、名前は?」


「1―1の中原 うみです。水泳部」


「中原 うみ、ね。わかった」


じゃ、と公園を出ていく和泉先輩を見送って、家までの道を急いで帰った。