駅から歩いて10分程の所にある和泉先輩のお家は、まだ新しい一軒家だった。


「おじゃまします…」


緊張でガチガチの手足を何とか動かして、ミュールを揃えていると、どこからかダダダッと言う足音が聞こえてきて。

背中にドンッと言う衝撃が来たかと思えば、いつも写真で見ていたセーラが、フンフンとにおいを確認していた。

そんなセーラに先輩が、「セーラ」と少し強い声で嗜めている。

セーラは満足したのか、また廊下を歩いてどこかへ戻ってしまった。


「ごめん、急に…。平気だったか?」


申し訳なさそうに、眉を下げる先輩を見て、「だ、大丈夫です。気にしないでください」と真っ赤になりながら、手をブンブン振って答えて。


「ならよかった。ま、上がれよ」


先輩の言葉に、少し遠慮しながらスリッパに足を通して、そのまま先輩の後ろをちょこちょことついていく。


「どうぞ」


そう言って開かれたドアの先はリビングだった。