照れたり怖がったりなんてしないで、さ
っさと告っちまえばよかった。
好きだ、ってたった三文字を言えたなら
、何かが変わったかもしれないのに。
大事な事はいつも、遅れて俺を急かすか
ら。
そんなとき、ある出来事が起こった。
それが、心優と俺との婚約を記す、誓約
書だったんだ。
勿論、法律的に効力があるわけでもなん
でもない、ただの紙切れだと言ってしま
えばそれまでなのだが。
心優を騙すのには充分だったし、もう一
度心優に接することも可能だった。
幼かったあの頃、婚約を交わしていたの
は、俺達だけじゃなかったんだ。
ほとんど興味本意で交わされた婚約。
だけど俺の両親は、どうしてだか異様に
心優を気に入っていて。
まさかの同居というラッキーすぎる立場
をてに入れた俺。
───……まだ。


