「やっとキスって気付いたのかよ?」
「なん、で……」
「だから、言葉じゃ伝えられないって、
言っただろ、今。……わかれよ、馬鹿」
そう言うと、大倉は顔をほんのりと赤く
染めて、そっぽを向いてしまった。
手は、繋がれたまま。
───……そこから先は、よく覚えてい
ない。
どこかのファミレスに入って、お昼ご飯
食べて、家まで送って貰って───……
ずっと、ふわふわしてて。
あのキスの意味と、大倉の言葉の意味と
、赤面した理由を、本当はわかっている
のに、別の答えに誘導しようとしてた。
答えは一つだけって、知ってるのに。
「……澤部、ボーッとしすぎ」
「え!?」
「帰らねーのかよ」
家の前で、大倉が首を傾げながらそう訊
いてきたけど、どうしても私の視線は、
その唇に向けられてしまって。


