毎年、袋にぎゅうぎゅう詰めにされてい
るチョコレートの山がどこにも見当たら
ないからか、不思議そうにしている。
「……貰ってない」
「ああ、そっか貰ってないのか~……っ
て、なんでだよ!?」
心底驚いたようにそう言う瞬。
そう。俺は今年、澤部からのチョコレー
トしか貰わなかった。
ていうかそれ以外、要らなくて。
「好きな女から貰えれば、充分なんだよ
。わかったか、ガキ」
俺はそう言って、唖然としている瞬にデ
コピンしてやった。
「乙女だな……、兄貴」
「……黙れ」
誰が乙女だコノヤロウ。
瞬はそんな俺を不思議そうに見てから、
じゃあ俺の勝ちだね、とちゃっかり勝利
宣言をして帰っていった。
欲しいのは、澤部からのチョコレート。
それから。
澤部自身も、この腕のなかにおさめられ
たら───。
そう、思った。


