ふわっと香るお酒の匂い。

ソファに座ったまま私を抱き寄せる詩月くんと立て膝をついたまま彼に身体を預ける私。

彼が静かに話しはじめる。
「俺、親父がいなくてさ。亡くなったんだ、中学ん時。雨の日に、駅まで車で俺を迎えに行こうとして、それで‥んで、母親もそれ以降おかしくなっちゃって‥いろんな男家に連れ込んで。ある日俺が、家に男連れてくるなよって言ったんだよ、そしたら急に怒りだして、お前のせいでお父さんは死んだんだからね、って

それからはめったに家に帰ってこないよ。そしたらもう、人生どうでもいいかなって‥酒とタバコはじめてさ、毎日友達と夜も騒いで。
もしかしたら母親が帰ってきて叱ってくれんじゃないかな、なんて期待もあって‥
だから‥って、みずは!?」


私は泣いていた。
よくわからないけど、詩月くんの痛い気持ちが伝わってくる。

「お前が泣いてどうすんだよ‥」
「‥ん。ごめん。」