咄嗟に身体を捻り、バック転で回避する。


直後にジルの立っていた地面に何かが刺さり、砂埃を舞い上げた。


両手でガードし、砂埃が掛かるのを防ぐ。


ジルは空中で腰のダガーを抜くと、着地して襲ってきた奴に向かって構えを取った。


その奴の姿を確認したとき、ジルはギョッとして息を呑んだ。



細く長い足が、ぷっくりと膨れた腹と頭部の脇から両側に四本ずつ伸び、ワサワサと不気味に動いている。


その足と腹は白と黒の縞模様だ。


頭部にはギラリと光る赤い目があり、顎から生えた鋭い牙がカチカチと音を鳴らしながらゆっくりと辺りを窺う。


全体的に5mはあるか。
いや、足を伸ばせば10mになるかもしれない。


体全体に薄い毛が生えた巨大な生物。



「なんだ、こいつは」


ロングソードを抜いたローグが驚愕の声を漏らした。


蜘蛛の化け物。


突如現れたその身の毛もよだつモンスターに、ジルは自分の額に無数の汗が浮き上がるのを感じた。


こんな生物は今まで見たことがない。