床には大きな円のようなものが祭壇の前から描かれており、古代の文字が周りを囲んでいる。


その意味するところは分からないが、真ん中にはあのイスナの龍の刻印があった。

同じ刻印が祭壇にも刻まれている。


ここで何代ものイスナの継承者が儀式を行ったのは間違いないだろう。



足元の円にも、ポツポツと規則的に蝋燭が置かれており、カチュアは順番にそれにも火を点けていった。


洞窟内は蝋燭の幻想的な灯りに包まれ、どこか怪しげでもある。


見るところ、洞窟内はここで行き止まりのようだ。


一番奥に泉のある、小さな小さな洞窟。


床や祭壇は整備されているが、ゴツゴツとした岩肌の壁や泉は天然そのものの形を利用しているようだ。



一通り作業を終えたカチュアが、ローグとジルの元へ戻ってきた。


「さて。ここからは私の番ね。
何も心配ないから、外で待ってて。すぐに終わるから」


これからカチュアの洗礼の儀式が始まる。


儀式は神聖なものだ。

イスナ国関係者以外には見せられない、そういうことだろう。



先ほど確認したとおり、洞窟内は袋小路になっていて入口は一つしかない。

入口を見張っていれば危険はないだろう。


そう判断した二人は、頷いて洞窟の外に出ることにした。


来た道を戻りながら振り返ると、カチュアは蝋燭の灯りに囲まれ、円の中心に身を収めていた。

瞳を閉じ、なにやらブツブツと呟いている。


それを確認すると、ジルは早足で洞窟の外に向かった。