「ックシュ…」


女は自分の短いクシャミで目を覚ました。


あまりよく眠れなかったのだろうか、頭がボーッとする。


初夏の朝の空気が彼女の頬を撫でて身震いを起こさせる。


冷たい風は彼女を次第に覚醒へと導いていく。


薄靄のかかった視界が晴れていくのに、さほど時間はかからなかった。



野太いしっかりのした幹に、雨風も凌そうな大きな葉を揺らした大木の木陰。

女はその脇に収まるようしにて佇んでいた。


すぐ側には木の葉を焦がした焚き火の跡が残っている。


生い茂る葉をつけた野太い木々が立ち並ぶ森の中。


その森を通る一本道から少し外れたところで、休むのにいい場所を見つけた。


そう、昨晩はここで野宿だった。



シーツ代わりに包んでいたマントは、朝露を含みじっとりと重くなっている。


女はそのマントを軽く払うと近くにあった枝に掛け、両手を天に高く上げて伸びをした。


頭だけでなく身体を目覚めさせようとすると、回した首の関節がコキコキッと軽く音を発する。


そうして彼女は、消えた焚き火の跡に火を熾しにかかった。