翌日の朝を無事に向かえた三人は、テキパキと支度を整え始めた。


乱れた髪を結わえ直し、少し高めの位置て一つに束ねる。


ジルは進路の確認をするために地図と方位磁石を取り出した。


「この先は傾斜がきつくて登れない。
こっちから廻って行くしかないな」


ジルの肩越しからローグがひょっこり顔を出して、手元の地図を覗き込む。


地図と森の中を交互に指差しながら言った。


顔が近い。

ローグとの至近距離にジルの鼓動はドキリと鳴った。


「そ、そうだね」


慌てて地図を仕舞い、ローグとの距離を取る。

自然に見せかけたつもりだったが、明らかに不自然だ。


しかし、ローグは気にした様子もなく、「さ、行こうぜ」と首を傾けて出発を促すのだった。


ぎこちない笑顔を向けながらジルは頷いた。


まったく…。
カチュアが変なこと言うから、変に意識しちゃうじゃない。


先に進むローグの背中を眺め、変に意識してしまう思考を締め出すように頭を振る。


気持ちを入れ替えなければ…。

今はイスナ国王女の護衛中なのだ。


もう危険がないとは言い切れない。

いや、危険だらけの森の中だと言っていいのだから。